アントリム伯爵(英: Earl of Antrim)、はイギリスの伯爵、貴族。アイルランド貴族爵位。有史以来2度創設されており、いずれもマクドネル家に対する叙爵である。
歴史
第1期(1620年)
マクドネル氏族はドナルド氏族の分枝であり、その一族はスコットランド、ハイランド地方及びアイルランド島に住まう氏族である。その係累ランダル・マクドネル(?-1636)がアラン島よりアイルランドに移住したのち、1618年5月28日にアイルランド貴族としてアントリム県のダンルース子爵(Viscount Dunluce, co. Antrim)に叙されたことが伯爵家興隆の嚆矢であった。彼はアントリム統監を務めたのち、1620年12月12日にアントリム伯爵(Earl of Antrim)に陛爵している。
2代伯ランダル(1609-1683)は清教徒革命においては王党派として振る舞ったほか、1644年ごろにはアイルランド貴族爵位のアントリム侯爵(Marquess of Antrim)に昇叙したが彼には子がなかったため、この爵位は彼一代で途絶えている。彼ののちは弟のアレクサンダーが爵位を襲った。
3代伯アレクサンダー(1615-1699)は1641年にクロムウェルより私権剥奪されていたが、襲爵前の1660年に私権回復していたため、爵位の相続には影響しなかった。また彼は晩年にも私権剥奪を受けているが、1697年には再び私権回復を果たしたことで、次代へと爵位を継承させることができた。
その曾孫にあたる6代伯ランダル(1749-1791)はアイルランド枢密顧問官やアントリム県長官を務め、1785年にアントリム伯爵(Earl of Antrim)及びダンルース子爵(Viscount Dunluce)に叙された。この両爵位には特別継承権が付されており、彼の娘アン・キャサリンとシャーロット、および姉妹の男系子孫にも相続を認める内容であり、これら2つの爵位が現存する爵位である。
彼はさらに1789年に特別継承権を持たないアントリム侯爵(Marquess of Antrim)に叙されている。初代侯爵が男子なく没すると、特別継承権を持つ2つの爵位は姉のアン・キャサリンに相続された一方、残りの3つの爵位はすべて廃絶した。
第2期(1785年)
第6代アントリム伯爵ランダル・マクドネル(1749-1791)が新規にアントリム伯爵(Earl of Antrim)に叙されたのち男子なく没すると、爵位は前述のとおり長姉アン・キャサリンに継承された。
その2代女伯アン・キャサリン(1778-1834)も継承すべき男子を欠いたため、爵位は妹のシャーロットに相続されている。
3代女伯シャーロット(1779-1835)ののちは、その長男ヒュー、次男マークの順で継承されており、以降はその男系子孫で現在に至っている。
8代伯ランダル(1911–1977)はナショナルトラスト協会会長を務めた。その息子である9代伯アレクサンダー(1935-)がアントリム伯爵家現当主である。
かつての一族の邸宅はアントリム県に位置したダンルース城。
現在の邸宅は同県グレナームに所在するグレナーム城がある。
現当主の保有爵位
現当主である第9代アントリム伯爵アレクサンダー・マクドネルは、以下の爵位を有する。
- 第9代アントリム伯爵(9th Earl of Antrim)
(1785年6月19日の勅許状によるアイルランド貴族爵位) - 第9代ダンルース子爵(9th Viscount Dunluce)
(1785年6月19日の勅許状によるアイルランド貴族爵位)
一覧
アントリム伯爵(第1期;1620年)
- 初代アントリム伯爵ランダル・マクドネル (?-1636)
- 第2代アントリム伯爵ランダル・マクドネル (1609–1682) (1645年にアントリム侯爵叙爵)
アントリム侯爵(第1期;1645年)
- 初代アントリム侯爵ランダル・マクドネル (1609–1682) (1682年にアントリム侯爵廃絶)
アントリム伯爵(第1期;1620年)
- 第3代アントリム伯爵アレクサンダー・マクドネル (1615–1699)
- 第4代アントリム伯爵ランダル・マクドネル (1680–1721)
- 第5代アントリム伯爵アレクサンダー・マクドネル (1713–1775)
- 第6代アントリム伯爵ランダル・ウィリアム・マクドネル (1749–1791) (1785年にアントリム伯爵叙爵、1789年にアントリム侯爵叙爵)
アントリム侯爵(第2期;1789年)
- 初代アントリム侯爵ランダル・ウィリアム・マクドネル (1749–1791) (1791年にアントリム侯爵、アントリム伯爵(1620年)廃絶)
アントリム伯爵(第2期;1785年)
- 初代アントリム伯爵(初代アントリム侯爵)ランダル・ウィリアム・マクドネル (1749–1791)
- 第2代アントリム女伯爵アン・キャサリン・マクドネル (1778-1834)
- 第3代アントリム女伯爵シャーロット・カー (1779–1835)
- 第4代アントリム伯爵ヒュー・シーモア・マクドネル (1812–1855)
- 第5代アントリム伯爵マーク・マクドネル (1814–1869)
- 第6代アントリム伯爵ウィリアム・ランダル・マクドネル (1851–1918)
- 第7代アントリム伯爵ランダル・マーク・カー・マクドネル (1878–1932)
- 第8代アントリム伯爵ランダル・ジョン・ソマレド・マクドネル(1911–1977)
- 第9代アントリム伯爵アレクサンダー・ランダル・マーク・マクドネル (1935-)
法定推定相続人は、現当主の息子であるダンルース子爵(儀礼称号)レジナルド・アレクサンダー・セントジョン・マクドネル(1967-)。
法定推定相続人の法定推定相続人は、その息子であるアレクサンダー・デイヴィッド・ソマレド・マクドネル(2006-)閣下。
脚注
註釈
出典
参考文献
- Meehan, Charles Patrick (1870), The Fate and Fortunes of Hugh O'Neill, Earl of Tyrone. and Rory O'Donel, Earl of Tyconnel; their Flight from Ireland and Death in Exile (2nd ed.), Dublin: James Duffy, https://archive.org/details/fateandfortunes02meehgoog/
- Hill, George (1873), An Historical Account of the MacDonnells of Antrim, Belfast: Archer & Sons, https://archive.org/details/historicalacmacd00hill
関連項目
- ロジアン侯爵―3代女伯シャーロットの夫マーク・カーが同家出身。

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